横井軍平ゲーム館

任天堂の開発部長として、「マジックハンド」「光線銃」という玩具や、
「ゲームボーイ」などのゲーム機を生み出してきた、横井軍平氏。
1997年に残念ながら交通事故で亡くなってしまいましたが、
現在のニンテンドーDSに代表されるような携帯ゲームの原点を築くなど、
今の任天堂の繁栄は、彼がいたからと言っても過言ではないと思います。

本書は横井氏が生み出してきたプロダクトについてのインタビューから
その発想の原点や、大切にしたポイントなどを追い、
最後にプロダクトを生み出し続けていく中で持ち続けた、
横井氏の「哲学」に焦点を当てる、という内容になっています。

ボクのなかでは「ゲームウォッチを作った人」というイメージはありますが、
正直なところ、横井氏についてはあまり知識ありませんでした。
この本は会社の後輩に借りて読んだのですが、
クリエーターとしての彼の発想の広さ、深さに驚嘆しました。

本書の中で、横井氏の「枯れた技術の水平思考」
(枯れた技術を別の用途に使えないか、ということを考えること)
という言葉が繰り返し語られています。
「ユーザが本当に求めていること」を実現するためには
何が必要なのか、を本当に考えるべきである。
当たり前のことではあるのですが、
特に新しい技術に飛びつきがちなエンジニアの端くれとして
常に持っていなければならない視点であると再認識しました。

(余談ですが、2ちゃんねるのゲーム板で名無しさんの名前が
「枯れた名無しの水平思考」となるのは、
この言葉に対するリスペクトなのだと思います)

他にも、
「中身は専門家に任せ、根本の理屈を理解する」
「メンバーに100%の力を出させるための方法」
「ユーザーが求めて”いない”ことを切り捨てる」
「技術に惚れ込まず、水平思考をする」
など、どれも理路整然としており、素直に納得できる話ばかりでした。

もしも、は言ってはいけないのかもしれませんが、
もし、彼が生きていたら、世界は今の姿とはちがっているのでしょうか。
今もそれ以上のものが生み出されていない「十字ボタン」を考案し、
15年も前に3Dゲーム機「バーチャルボーイ」を生み出した稀代の天才。
その天才の、早すぎる死が惜しまれてなりません。

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横井軍平ゲーム館: 「世界の任天堂」を築いた発想力 (ちくま文庫)
横井 軍平 牧野 武文
筑摩書房
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マーケットプライスの値段を見ると、めっちゃ高いんですね。
確かに今でも、いや、今だからこそ読むべき名著だと思います。