新ロードス島戦記

「ロードス島戦記」といえば、言わずと知れたファンタジー小説の名作シリーズ。
当時はライトノベルという言葉はなかったと思うのですが、
いわゆるこの元祖と言ってよい作品だと思います。
学生時代、元となったゲーム(知る人ぞ知るTRPG)などにもハマり、
大げさでなく、良くも悪くも人生の大きな転機となったシリーズです。

「戦記」「伝説」は読んでいたのですが、シリーズの完結編である「新伝説」だけが
なぜか積まれたまま未読でしたので、一気に読んでみました。

「魔神戦争」「英雄戦争」「邪神戦争」といった大戦を経て、
ロードスに平和が訪れた後の、”暗黒の島”マーモが物語の舞台になります。
邪神戦争(ロードス島戦記における第三部)の主人公格であり、
その後にマーモの公王の座に着いたスパークと、
2柱の女神をその身に降ろしてなお魂を保ち続けたニース(小ニース)を軸に、
新生マーモ帝国、そして破壊神カーディス教団との戦いについて物語が展開されます。

ベルドやバグナードのような圧倒的な英雄ではなく、
欠点も多い若き王スパークが主役ということもあり、かなり感情移入ができました。
そのぶん、やや”ロードスの騎士” パーンやスレインをはじめとする、
「戦記」の初期メンバーの性能がチート化している気もしましたが。

これまでのロードス島も”善対悪”のような単純な構造ではありませんでしたが、
「新戦記」ではさらに、悪であっても見方によっては敵対すべきでない
という思いということが強く感じられました。
そうした流れから、スパークがかつては封じ込もうとしていたマーモの闇を受け入れ、
ダークエルフ、ファラリス教団、そして新生マーモ帝国からも強力な味方を得て
戦いに挑むところは、とてもわくわくしながら読み進められました。

個人的にはちょっと人を殺し過ぎかなあ、というのがやや残念だったところです。
もちろん、まったく犠牲なしというのもリアリティがないので、
ある程度は仕方ないところではあるとは思います。
ネタバレになりますので詳細は伏せますが、
古くからのファンであればあるほど、ショッキングな内容かもしれません。
パーンをはじめ、かつての登場人物も登場しますので、その分楽しめるとも思います。
個人的には、ウッド・チャックの動きが渋くて好きです。

読み終わって、あとがきで作者自ら述べているように、
「新戦記」はファンタジーではあるのですが、
それ以上に恋愛小説だったんだなあと感じました。
長きに渡ったシリーズであり、完結してしまったのは寂しいですが、
個人的にはとてもきれいにまとまった結末だと感じました。
また、「伝説」のナシェルの子孫や、パーンの出自についても、
何となくではありますが示唆があり、ファンとしてはうれしいところです。
「戦記」「伝説」も、電子書籍でもう一度読み返してみようかなあ。

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