日本の風俗嬢

風俗嬢と言うと、「売春」という連想から、
かなりアンダーグラウンドなイメージを持たれるのではないでしょうか?
このため、性ビジネスは貧困者については最後にたどり着く稼ぎの手段として、
良く言えば、社会のセーフティーネットとして機能してきたとも言えます。

しかし近年、この性ビジネスが一変していると本書では述べられています。
いわゆる「ブルセラ世代」と呼ばれた1980年代生まれが、20歳になった2000年あたりから
性の売買に抵抗のない女性が急増し、性に対してポジティブになったと論じています。
あわせて、「肉食女子」などという言葉が生まれたのも、その兆しであったと指摘しています。

これにより、性産業における需要と供給のバランスが崩れ、
性風俗が「女性なら誰でも参入できる」ビジネスではなくなり、
それによって、同時に社会のセーフティーネットとしての機能も失われたと述べられています。
本書の中で、「何らかの理由で風俗嬢を脱せない女性」のインタビューが何件か登場しますが、
一様に悲壮感が漂う内容となっています。

こうしたは変化を受けて、反社会性力との関わりや非合法の行為など
解決すべき問題は多々あるものの、
今後は風俗嬢を「技術者」として認めるべきではないかと本書では論じられています。
例として、ナイチンゲールが挙げられていますが、
19世紀当時には、職業としての社会的地位は極めて低かった「看護」を
仕事として認知させたのと同様のことを、性風俗の世界でも実現しよう、というのです。

事例として、性風俗の社会化に取り組んでいる非営利団体へのインタビューを通して、
性風俗をただの娯楽ではなく、「問題解決型サービス」へ消化させる取り組みを紹介しています。
もちろん、風俗嬢も「技術者」としてのスキルを求められることになりますが、
性ビジネスの変化の過程として、荒唐無稽な結論ではないように思えます。

テーマがテーマだけに、万人受けする内容ではないとは思いますが、
視点として非常に斬新な点も多く、新たなビジネスの萌芽としても興味深い内容であると感じました。

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日本の風俗嬢 (新潮新書 581)
中村淳彦
新潮社
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