ロサンゼルス→シカゴ Amtrak 2泊3日の旅

2月に行った、陸路でのアメリカ横断の旅。
この旅のハイライトとも言うべきなのが、Amtrak「サウスウェストチーフ」号による、
ロサンゼルスからシカゴまでの44時間の移動でした。
ちょっと遅くなってしまいましたが、記憶をたどりながら、
感想などを書いておこうと思います。

ロサンゼルスのユニオン駅。堅牢な印象です。

ロサンゼルス発のサウスウェストチーフ号は夕方の発車のため、
12時ぎりぎりにホテルをチェックアウトした後は、ひたすら駅の待合室で
列車を待つことになります。
もちろん、その間観光に行っても良かったのですが、
前日かなり歩き回っていたため、待合室のベンチで待つことにしました。

まずは、窓口でチケットを受け取ります。
チケットの窓口に日本で予約したときにプリントアウトした予約票とパスポートを出せば、
それだけでほとんど問題なくチケットを発行してもらいます。
また、荷物を預ける場合はその旨伝えます。
ただし、預けた荷物は終着駅まで受け取ることができないため、
必要な荷物は手元にまとめて置く必要があります。
ボクは今回バックパックだけでしたので、荷物は預けなかったのですが、
階段などはかなり狭いので、スーツケース等は預けた方が良いかと思います。

歴史を感じさせる、天井が高く広々とした印象の待合室。

それから、待合室でひたすら巣を張って、本やドラクエで時間を潰します。
ロサンゼルスのユニオン駅は、待合室も広く、また警備員も巡回しているので、
あまり危険も感じず、比較的快適に過ごすことができました。
とはいえ、待合室で6時間近く待つのはさすがにしんどかったですが。
たまに、ホームレス等が話しかけてきたりしますが、無視するのが一番です。

なぜ、そんなに待ったかと言うと、Amtrakは日本のようにアナウンスがないので、
自分で電光掲示板などで確認し、ホームを探して移動しなければなりません。
また、ダイアが実質上ほとんど機能していないアメリカの鉄道では、
発車時間の変更や到着ホームの変更などは日常茶飯事です。
特に、サウスウェストチーフは、直前まで乗り場ホームの案内がされないということが、
ブログ記事で書かれていたため、ちょっと心配して、早めの行動を心がけました。

案の定、発車30分前にはホームが表示される、と窓口では言われたのですが、
その時間になってもホームの表示が出ず、かなりあせりました。
やむを得ず、プラットフォームの方に向かい、自力で探すことにします。
幸い、ホームの入り口に「Southwest Chief」の立て看板を見つけることができたため、
無事、列車にたどり着くことができました。

たくさんの貨車も連結され、かなり長い列車構成です。

Amtrakは、「走るホテル」とも評されるほど、快適に旅行ができるようになっています。
特に、サウスウェストチーフ号やカリフォルニアゼファー号などは、観光列車のため、
食堂車はもちろん、眺めの良いラウンジカーがあるなど、旅を楽しむ設備が整っています。
広大なアメリカを移動する場合には飛行機が普通のため、
乗客は、鉄道で旅行する人は移動のプロセスを楽しみたいという、
かなり裕福な人が多いようです。
そのためか、車内はかなりわきあいあいとしていて、いい雰囲気でした。

また、今回は奮発して、Roomette(ルーメット)という寝台車を利用しました。
Roometteは1畳ほどの個室で、カーテンや扉を閉じることができるため、
プライバシーを確保することができます。
見た目は向かい合った座席なのですが、倒すことによってベットにすることができます。
また、上段にもベットを作ることができるので、2人でも利用することもできます。
ベットにすると、小柄な日本人であれば広々と使え、めちゃくちゃ快適です。

そして、寝台車の客は、乗車中すべてにおいて優遇されます。
食堂車の予約は食堂車主任が回ってきて優先的にとってくれたり、
コーヒーやジュースが飲み放題だったり、シャワー室を利用できたりと、
いたれりつくせり、といった感じです。
Coach(コーチ:座席車)に比べて、3倍ほどの料金(時期によって違うようです)
になるのですが、食堂車での飲食代が含まれている(アルコールは別です)ため、
長旅をするのであれば、Roometteのほうが絶対に良いと思います。
(やはり人気があるので、早めに予約しないといけませんが)

前置きが長くなってしまいましたが、電車に乗り込むときに
「寝台車か座席車か」と聞かれるので、寝台車の方に乗り込みます。
寝台車は1台につき1人の車掌さんがついてくれますので、
発車するとすぐ夕食なので、食堂車の予約をとりに来てくれますので、
その際にあいさつしておきます。
車掌さんはアントニオさんというドレッドヘアの大柄なお兄ちゃんで、
シカゴまで本当にいろいろと気を配ってお世話してくれました。

カリフォルニアの砂漠が、夕日に紅く染まる。

出発が夕方なので、発車するとすぐ、カリフォルニアの砂漠が夕日に染まります。
Roometteの窓はかなり大きく、ラウンジカーに行かなくても十分に景色を楽しめます。
そして、あたりが完全に暗くなった頃、夕食の呼び出しがかかったので、
食堂車に移動します。

食事はかなり本格的で、魚料理やステーキなどから、好みの料理を選べます。
また、Amtrakは「食事の時の会話も旅の楽しみの一つ」というコンセプトがあるようで、
どんなに座席が空いていても、相席にされます。
なので、2泊3日中、強制的に何回かの英会話レッスンがついてくるようなものです
とはいえ、前述した通り、乗客は裕福な人(主にお年を召したご婦人や紳士)が多く、
ボクのつたない英語も一生懸命聞いてくれ、会話をしてくれます。

アーミーの女性兵士や子供など、いろいろな人がいるので、会話も楽しいです。
やはり、皆さん鉄道が好きなのか、「日本の新幹線の話」は鉄板でした。
また、シカゴに行くと言うと、いろいろな情報を教えてくれました。
だんだん慣れてくると、こちらから質問をすることができるようになってくるなど、
これはかなりいい会話の勉強になりました。

ちょっと心配したチップですが、同じ席だった人に聞いてみたところ、
「2.3ドルってところじゃない?」とのことでした。
寝台車の客は食事代は不要なのですが、Coach客用にメニューには値段が書いてあるので、
その10~15%くらい、ってのが妥当のようです。
また、車掌さんには、シカゴで電車を降りるときにまとめて7ドルほどチップを渡しました。

半畳ほどの狭いシャワールームでシャワーを浴びて部屋に戻ると、
車掌のアントニオさんがベッドを組み立ててくれます。
買ってきたビールを飲みながら横になっているとすぐに眠くなってくるので、
電気を消すと、外は明かり一つない砂漠の闇。
あおむけになると、一面の星空が窓の外に広がっています。
カーテンを閉めるのがもったいなくて、いつまでも眺めていたら、
いつの間にか眠り込んでしまったようです。贅沢な夜でした。

砂漠を見ていると、アメリカの広さを実感します。

朝焼けとともに目が覚め、窓の外に広がる砂漠を眺めます。
また、忘れがちですが、1日ごとにタイムゾーンが変わるので、
時計の時間を毎朝直さなければなりません。日本じゃ体験できないですね、これは。
大陸横断道路であるルート66沿いを走るため、たまに小さな町を通り過ぎるなど、
窓の外を見ているだけで、アメリカらしさを感じることができます。

アルバカーキー駅にて。

電車はずっと走り続けているわけではなく、もちろんいくつかの駅に止まります。
たまに、1時間近く停る駅もあるので、外に出てみることもできます。
車内ではタバコが吸えないので、喫煙者は駅に止まるたびに降りていたようです。
長く止まる駅では、現地の銀細工やTシャツなどを販売しているので、
それをぶらぶら見て回ったりします。
なんか、こんなのも鉄道の旅の醍醐味だな、と思いました。

窓の外の気温は下がり、雪原が目立ちはじめます。

ラウンジカーや食堂車をぶらぶらまわっていたりすると、あっという間に時間がたち、
窓の外も徐々に変化していきます。
温暖なカリフォルニアの砂漠から、雪が目立つ風景に変わっていきます。

湖かと思えるような、凍れる大河ミシシッピーを越える。

3日目、ミシシッピ川を渡ると、シカゴまではあと少しという感じです。
畳1枚ほどの狭い部屋ですが、このころにはかなり愛着が湧いてきており、
電車から降りるのがさみしい気分になってきます。

シカゴに近づき、かわいらしい街が目立ちはじめます。

そして、窓の外に超高層ビルが見え始め、予定時間よりも1時間早くシカゴに到着です。

シカゴ摩天楼群が見えてくると、列車の旅もあとわずか。

数時間の遅れはアタリマエのAmtrakとしては、奇跡のような正確さです。
お世話になった車掌のアントニオさんに別れを告げ、
シカゴの街へ新たな旅の一歩を踏み出しました。

その先は別の記事に書いたとおりです。

乗車前はかなりいろいろと不安だったのですが、実際にはとても快適で、
また、アメリカを旅している、ということが実感できると思います。
かなり時間に余裕がないと難しいと思うのですが、
機会があれば、ぜひまたアメリカを鉄道で旅してみたいです。