グーグル Google 既存のビジネスを破壊する

Googleの先進的なところは、インターネットの技術を使って
本気で世界を変えようとしているところなのだと思います。
Google関連の図書ですと、その最先端のテクノロジーや
印象的な企業風土に焦点が当てられていることが多いのですが、
この本では、Googleがビジネスに対して及ぼしている影響について述べられています。

本書の著者はITに関する多数の図書を出されている佐々木俊尚氏。
突飛な論はあまりなく、目新しい内容は少ないのですが、
テクノロジーの及ぼすビジネスへの影響について、論が展開されています。

副題にあるとおり、Googleはそれまで当たり前だった既存メディア的な
「バナー広告」という既存のビジネスを「破壊」し、
「キーワード広告」という、インターネットならではの手法で、
これまでリーチできなかったリテール(いわゆるロングテール)に
人々がたどりつけるようにしてきました。

広告ビジネスのみならず、すべてのビジネスにおいて、
Googleはその卓越した技術を用いて再編しようとしている、というのが
本書の主題になります。
そのターゲットは、IT業界のガリバー、MicrosoftやYahoo!も例外ではなく、
「Googleドキュメント」「iGoogle」といったサービスで、
「すべての情報を整理し、検索できる」ように布石を打っています。

Googleの理想は、すべての情報インフラの中心たること。
こう言ってしまうと、ジョージ・オーウェルの名作SF小説『1984年』に登場する
Big Brotherのような気味の悪さを感じてしまうのですが、
それを「利便」と受け取るのか「管理」と受け取るのかは
議論の分かれるところだと思います。
どちらにしてもGoogleは、インターネットの、
つまり現在では事実上のすべての情報インフラの神として君臨するに
一番近い存在になっているのです。

「なぜ、検索エンジンの会社がこんなに影響を持っているのか」
「なぜ、Googleはこんなに儲かっているのか」
一般に持たれがちな、こうした疑問に対して、豊富な事例とともに、
とても分かりやすく解説がされています。
論に飛躍がある部分もかなりあるように感じられ、
すべてを鵜呑みにするのは危険だと思いますが、
「ロングテール」や「サーチエコノミクス」などといったキーワードについても
ていねいな説明がなされていますので、
「インターネットのビジネス」について、分かりやすく理解できる本だと思います。

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グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)
佐々木 俊尚
文藝春秋
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