踊る大捜査線に学ぶ組織論入門

おもしろそうなコンセプトの本だと思って手にとってからしばらく寝かせてしまっていたのですが、ようやく読むことができました。
タイトルのとおり、人気ドラマ・映画である『踊る大捜査線』のシチュエーションや名ゼリフをモチーフにした、「組織論」の教科書です。
僕はドラマの方は未見で映画の方しか見ていないのですが、題材となっているセリフやシチュエーションは映画版を元にしているケースが多いため、支障はあまりなかったかと思います。

『踊る』はドラマであり、また”警察”というやや特殊な組織を扱ってはいるのですが、広く共感を集めているところは、「誰にでも当てはまりそうな」組織の話が含まれているからではないでしょうか。
その「誰でも当てはまりそうな」組織の話が、本書では”組織論”としてわかりやすく説明されています。

特におもしろいと思ったのは「リーダー論」の部分です。
『踊る』のリーダーと言うとやはり室井さんがまず思い浮かびますが、本書では和久さんや新城管理官、さらには”スリーアミーゴス”までも様々なタイプのリーダーとして解説されています。
確かに神田署長をはじめとする”スリーアミーゴス”は、作中では「情けない上司」の代表のように描かれています。
ただ彼らは。青島刑事やすみれさんたちとは逆の”内向き”上司であり、上(いわゆる”本店”)との調整(接待なども含む)などで組織を潤滑に動かしているという意味で彼らも彼らとしての役割を果たしている、と解説されており、これはとても納得ができました。
「情けない上司」でもあり、その実「愛される上司」でもあるということが腹落ちした感じです。

長く組織に属してきたのである程度体で覚えていた部分もあるのですが、改めて「組織論」として体系立てて読むことで、いろいろと整理して理解することができました。
「組織論」と言うとなかなか気後れする部分もあるのですが、とても読みやすく一気に読破することができました。
そして、組織の姿を時に滑稽に、時に真剣に描き出した『踊る大捜査線』はやはり名作なんだなあ、と改めて感じました。

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踊る大捜査線に学ぶ組織論入門
壽宏, 金井, 恵美子, 田柳
かんき出版 (2005-09)
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