若者はなぜ3年で辞めるのか?

バブル景気の終焉に伴い。年功序列による終身雇用が崩れ去ったといわれて久しくなりました。
「年功序列による終身雇用」は、技術の蓄積と研鑽という意味で大きな効果を生みました。
戦後の日本の経済復興と、技術立国としての成功はこれによるものが大きいと思われます。
ただしこれを維持するためには、経済が拡大し続け、それによってポストや地位が無限に生まれ続ける事が必要です。
将来的にはこの”レール”の先にポストと地位が得られると信じら得るからこそ、
若者は多くの場合望まない下働き(本書では”搾取” とまで言われています)に耐えることができました。

ただ、バブル景気の終焉、やリーマンショックなどの景気悪化により、この流れは潰え、
多くの人は「年功序列による終身雇用」、”レール”の行き先を失いました。
この崩れかけた「年功序列」という制度を守り、そして老人たちの”レールの先”を守るために、
若者を搾取し続けているのと、筆者は述べています。
「氷河期」と呼ばれた世代はもちろんですが、いわゆるバブル入社でかき集められ
(他社の面接を受けさせないために豪華なパーティや海外研修があったなどという話は
今ではおとぎ話としか聞こえません)、その上で”レール”がいつの間にか消え去った人々こそが
最も犠牲者であると言っていいのかもしれません。

「年金制度」「天下り」など、筆者の主張を裏付ける例は枚挙に暇がありません。
最近だと「非正規雇用の拡大」や「移民受入議論」などもそうでしょうか。
この年功序列という、いわゆる「昭和的な考え方」を脱却しないと
いつまでも若者が”搾取”される構造が続く、と警鐘を鳴らします。

ただ、「レールが失われたこと」は、逆を返せば「自分の望む道を掴み取れる」チャンスが
万人に広げられた、ということでもあると筆者は述べています。
座っているだけで幸せな老後まで連れて行ってくれる”レール”はたしかに魅力的ですが、
「自分が何を成したいのか」については押し殺すことになります。
僕個人としても非常に同意できる意見で、昨今のベンチャー企業の隆盛や
(自分もそうですが)フリーランスのような新しい働き方など、
年功序列という「昭和的な考え方」からの脱却が求められ、着実に進んでいます。
(もちろん、それによるリスクもあるのですが)

やや古い本ではあるのですが、その指摘と課題感は全く古く感じませんでした。
読み終わったあとに「自分が何を成したいのか」について、改めて感じさせられます。

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若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~
城 繁幸
光文社新書(2006-09-21)
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