テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか

めちゃくちゃ直球なタイトルに惹かれて読んでみました。

インターネットがテレビに成り代わるという話が出始めてから、
かなりの時間が立ったように思いますが、
テレビの影響力はかなり小さくなったとはいえ、
それでもまだ、多くの人にとって最も大きな情報源となっています。
旧ライブドアや楽天などのインターネット企業が
テレビ局をその手に収めようとしているという報道もありましたが、
その都度、いつの間にか立ち消えになってしまっているように思います。

多くの人が、テレビとインターネットを組み合わせれば
もっとおもしろいことが起きるのではないかと思っているにもかかわらず、
なぜそうした動きがでてこないのか、という疑問は常に持っていました。
本書ではこの答えをキー局と地方局の関係や、資金の流れ、
そしてそこに潜む利権などの観点から、わかりやすく解説されています。

「なぜ、過去に放送した番組をネットで見れるようにしないのか」という素朴な疑問から、
テレビ局とタレント事務所の関係性、そして昨今NHKがネットに注目する意外な理由など、
興味深いトピックスにていねいに答えられており、とても理解しやすい内容となっています。

テレビ局や番組制作会社はもちろん、政府、そして家電業界をも覆い尽くし、
50年の長き時をかけて完成されてきた既得権益に対して、
インターネットを擁するIT業界は風穴を開けようとしつつあるように見えます。
しかしその闇は、我々が想像しているよりも、遥かに深いのかもしれません。
ただ、これまでこうした「おいしいビジネス」の恩恵にあずかれなかった、
下請けの番組制作会社がITとが手を組み、新しいビジネスモデルを作り出すことで、
この闇に対する逆襲の萌芽が生まれ始めている、ということも本書では述べられています。

なかなかオモテからは見えにくい放送業界の動向について、
非常にわかりやすく理解できる内容になっていると思います。
「テレビとインターネットの融合」について興味がある人には、ぜひ読んで欲しいです。

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テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか
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